26年10月1日より、「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度」が開始されました。これは、3年間の時限立法で、その間に、出資持分のある医療法人が、出資持分のない医療法人に移行した場合、発生した相続税、贈与税が猶予・免除される制度です。
今回の措置法は、医療制度改革を進める厚生労働省の意向が色濃く反映しています。
平成19年の第5次医療制度改革以降、新たに設立された医療法人は、すべて出資持分のない医療法人として設立の許可を受けることとなりました。出資持分とは、株式会社の株式のようなもので、通常、医療法人を設立する際に理事長=院長が現物出資などします。つまり、財産権なので、出資者が退社した場合や、法人が解散した場合、出資者に戻されるべきものでした。しかし、そうすると医療法人は理事長の所有物ということになり、医療法人の非営利性の徹底化を図りたい厚生労働省の医療制度の矛盾をきたしてしまいます。
現在でも、全国の医療法人の9割近くは、「出資持分のある医療法人」(旧制度で認可された医療法人)です。その「出資持分のない医療法人」への移行を促進するための優遇税制なわけです。ですから、この税制の恩恵をうける医療法人もあれば、自分の財産権を放棄するのに比して現実的なメリットのないケースもあろうかと思われます。理事等の構成や、財産状態、将来の事業承継等に各法人が置かれている状況ごとに細かな検討が必要です。
当事務所は、このほど日本医業経営コンサルタント協会の「持分なし医療法人移行相談窓口」に指定されました。期限のある課題なので、お早めに検討されることをお勧めします。
・厚生労働省 リーフレット
≫http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/dl/ikousokushin.pdf